カルチャー
2017.04.11(Tue)

【フクオカhumanpedia】第10回「福岡という街や景色から生まれる演劇を」

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「フクオカhumanpedia」は、古くから商都として栄えてきた福岡の街を支えた、歴史上の著名な人物や、知る人ぞ知る職人たち、現在福岡の各分野で活躍している人々を紹介する連載コラムです。

第10回目に登場するのは、福岡の劇団「万能グローブ ガラパゴスダイナモス」の主宰・椎木樹人さん。

「万能グローブ ガラパゴスダイナモス」は2005年の旗揚げ以来、福岡を拠点に一貫したワンシチュエーションコメディを展開する劇団として、年2回の本公演を中心に活動し、緻密な笑いと大胆なストーリー展開で舞台関係者やファンならずとも惹き付ける存在に。

18歳で出会った演劇の世界がいつしか一生の居場所に

山口県下関市に生まれ、転勤族だった家族とともにいろんな地に暮らし、小学校3年生から福岡に来た椎木樹人さん。演劇の世界に飛び込んだきっかけは福岡大学附属大濠高校の演劇部に入ったことでした。

「大濠の演劇部の特徴なんですけど、入部勧誘のときに、部が誇る卒業生である いのうえひでのりさんが演出を務める劇団☆新感線の映像を見せられるんです。そこで演劇のおもしろさやとがったことをやる洗礼をまず受けるんですけど、とにかくそれが衝撃でした(笑)。当時は男子校だったのでいわゆる既存の演劇をやるのではなく、オリジナルでつくるのが当たり前だったんです。部に脈々と受け継がれている『芝居は観客を楽しませるもの』というエンターテイメントの精神みたいなものがあったおかげで、僕らもわりと最初から今のスタイルに近い感じで、おもしろいものをつくろうという空気がありましたね」と振り返ります。

高校時代から精力的に自分たちの演劇を創作し続け、大学に進学した頃にはもう劇団を旗揚げしてファンもつきはじめました。「1年目から5年目は僕らも若かったし、笑い合って楽しみながらトントン拍子に事が進んだという印象でした。でも年数が経ってくると、メンバーが抜けたり、それぞれやりたい方向が違ってきたり、どこの劇団も多かれ少なかれ抱えるような壁を経験しました」。

いつも笑顔で柔らかい雰囲気とは違って、演劇や自分に対してとてもストイックな椎木さん。決して自分たちが楽しむ遊びの延長ではなく、最初からある意味プロ意識に近いものを持ってやってきました。18歳の時点で、「これからの10年、絶対後悔しないように演劇と向き合いたい」と強く心に誓ったんだそうです。

自分を全否定されるその繰り返しで磨かれていく

「演劇とは、常に自分を否定されることと逃げずに向き合うこと」とドキッとするような一言がこぼれます。

「劇団を始めて以降、ありがたいことにいろんなチャンスをいただいたんです。テレビにCMに他劇団への客演、海外公演やプロデュース公演なんかも。役者は自分の全身を使って、今までの経験や持って生まれた感性をフル稼働させて精一杯表現する仕事です。それに対してとにかく怒られ、けなされます。これっていわば自分という人間を全否定されることとイコールなんですよね。それはとってもキツいことです。だけどそうやって磨かれて、鍛えられて、やっとオーラが出てくる。こういう繰り返しの中にある種の喜びを感じられる人じゃないと続かないんですよね。だから役者を続けている人っていうのは、劇団でもテレビや映画で活躍する人でも相当熱いものを持った人だと思います。僕もとにかく『なんでできないんだろう』『まだまだだ』の連続でとにかく自分と向き合うばかりでなかなか人に優しくする余裕はなかったかもしれないな。10年を過ぎてやっと最近ちょっと優しくなってきたと言われますよ(笑)」。

2016年「月ろけっと」より ©藤本彦

10年目を迎える前後でよく聞かれる質問があったそうです。それは「東京進出はしないの?」というもの。「もちろん考えたことはありますよ」と即答。「福岡は芝居好きが少ないでしょ」なんて指摘されることもあります。しかし、それは単に人口の問題じゃないかと椎木さんは分析しています。

「東京だからすべての芝居がおもしろいとか、観客の見る目が肥えているとか、福岡が負けているということではないと思っているんです。僕らは福岡でもいい芝居をつくれているという自信があるし、この街が好きです。ただ観てもらえていないからには足りないものはあるわけだからそこは足していきたいですね」とこれからの自分たちの歩むべき道も見えているよう。

芝居を観たことがないという人に観てもらうというのは自分たちの使命のひとつかもしれないとも話します。「福岡らしさを問われることも時々あって以前はそれって何だろうと考えたりもしましたが、最近は僕ららしくやっていればそれがひいては街の魅力になって、わざわざこの街に僕らを見に来てくれる人がいればそれも福岡の魅力のひとつになるんじゃないかなと考えはじめています。『観に来てほしい』という気持ちはもちろんありますし、喉から手が出るほど来てほしいんですが(笑)、僕らが楽しませていたらお客さんの方から『観たい』と思ってくれるはずなんです。そう思われる劇団になりたい」と情熱の一端を見せてくれました。

大型連休1日限りの大舞台。演劇初体験の人にこそ来てほしい

影響を受けた存在についてうかがうと、京都の劇団「ヨーロッパ企画」の話が飛び出しました。

「今でこそ全国区で人気の劇団ですが、僕らが知った当時はワゴン車でツアーをまわっていて、まだネットが当たり前ではなかった時代にネット上でいろいろおもしろい企画をやっていたんです、しかもすごい量(笑)。でも、無理してストイックにやっていますという感じじゃなくて、とにかく楽しんでいる感じがものすごく魅力的だなと思ったんです。それぞれの個性がきちんと立っていて、ひとりひとりのクリエイティブな才能が集まってまた大きなひとつのパワーになっていることも伝わってきてすごい衝撃を受けました。舞台のつくり方も台本通りじゃなくてアイデアや人間性をぶつけあいながらつくっていく感じで独特だったんですよね。一時期僕らも真似したりしましたけど(笑)、今は自分たちらしさも大切にしながら仲良くさせてもらっています」。

そんな椎木さんが今目の前の目標として掲げているのが、2017年5月3日、1日限りの大舞台。収容人数が1,000人を越えるキャナルシティ劇場の舞台に初めて立つ記念すべき日です。

「これまで福岡、東京、海外といろんな劇場で演じさせてもらってきましたが、今回の劇場の大きさは未知なんです。これまで目標にしてきたことや夢見たことをだいたい実現させてきたんですが、今回は夢にも見ていなかったことなので(笑)。今稽古中なんですけど、チケット売れるかなとか初めてのメンバーとも演じるので大丈夫かなとか、いろんな不安がないというわけではありません」とちょっと心配そうな表情も。

「星降る夜になったら」という芝居は今回が再演となるもので、高校を卒業した同級生たちの数年後を描いた作品です。20代前半のみずみずしさが溢れた青春群像コメディで19名のキャストが登場。誰もが甘酸っぱいと共感するようなシーンやセリフが見どころで、客演には前述の「ヨーロッパ企画」の永野宗典さんのほか、福岡のテレビやCMで活躍するおなじみのタレントやモデルたちが名を連ねます。ファンはもちろん、まだ“ガラパ”を体験したことがない人にもとっておきの時間になること間違いなし。ぜひWebだけでも見てみてください。

<profile>
椎木 樹人 さん
山口県下関市生まれの俳優、福岡の劇団「万能グローブ ガラパゴスダイナモス」主宰。福岡演劇をより一層盛り上げるため、 様々なアプローチから仕掛けを起こす 『表現者の作る、表現者のための、表現者視点による、表現者組織』である福岡若手演劇協会を立ち上げ、代表理事を務める。2017年4月からTNC「ももち浜ストア」にレギュラー出演。スリーオクロック所属。身長178cm。

「万能グローブ ガラパゴスダイナモス」
http://www.galapagos-dynamos.com/

◎第23回公演「星降る夜になったら」
2017年5月3日(水・祝)13:00~/16:30~
キャナルシティ劇場(福岡市博多区住吉1-2-1 キャナルシティ博多4F)
一般4,300円/ペア券7,800円/
学生券〈当日座席指定・引換時要学生証〉2,500円(すべて税込)
※当日券は500円UP
※ペア券は前売のみ

予約・問合せ
スリーオクロック 092-732-1688(平日10:00~18:30)

脚本・演出:川口大樹
出演:椎木樹人、石橋整、横山祐香里、早樋寛貴、山崎瑞穂、柴田伊吹、針生あかり、西山明宏、隠塚詩織(ここまでは万能グローブ ガラパゴスダイナモス)
杉山英美
入江真潮(おりがみ/ワタナベエンターテインメント九州)
岡武史
高野由紀子(演劇関係いすと校舎)
田坂哲郎(非・売れ線系ビーナス)
三好美優(劇団ルアーノデルモーズ)
JUMPEI(エレメンツ)、馬越琢己(10神ACTOR)、有佐(CGE)
永野宗典(ヨーロッパ企画)

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