カルチャー
2017.09.12(Tue)

【フクオカhumanpedia】第15回「MADE IN JAPANの良さを伝えたい」

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「フクオカhumanpedia」は、古くから商都として栄えてきた福岡の街を支えた、歴史上の著名な人物や、知る人ぞ知る職人たち、現在福岡の各分野で活躍している人々を紹介する連載コラムです。

第15回目に登場するのは、今治タオル専門店「IKEUCHI ORGANIC」福岡ストアで店長を務める井上夏樹さん。2015年に博多リバレインモールにオープン以来、じわじわとファンを増やしています。

子どもの頃に見た景色から、世界視野が身について

今治タオルは、MADE IN JAPANの名作の代表格であり、誰の日常風景にも1枚は寄り添う存在です。柔らかくしなやかなその質感は使う人に心地よさと満足感を届けてくれます。

井上さんはそんなタオルの魅力をいろんな形でお客さまに届けようと、日々試行錯誤しています。「私自身、この会社に入るまで、タオルについて深く考えたり、こだわりを持って選ぶ方ではなかったので、その頃の視点を忘れずにお客さまに伝えていけたらと思うんです」と瞳を輝かせます。

生まれた場所こそ福岡だったものの、父親の仕事の都合で1~4歳をインドで過ごしたそうです。「さすがにあまり記憶はないのですが、その時の縁で、母親がインドで買い付けをするような仕事を始めたので、その後もインドに連れて行ってもらう機会が数回あって」と幼い頃を振り返ります。

当時のインドは貧富の差が激しく、子どもたちも路上で生活をすることはめずらしくありませんでした。外を歩くストリートチルドレンを横目に、自分はクーラーの効いた車に乗って、目的地まで安全なルートで運んでもらえるという状況を冷静に考え、生まれ育つ国によってこんなにも環境が変わってくるのかということにカルチャーショックを受けたと言います。

フェアトレードを当たり前にやっている会社との運命の出会い

子どもの頃、海外で感じた価値観が心の根っこに残っていたのか、大学では世界の地域の環境・文化について学ぼうと京都に進学。大学院まで進み、バングラデシュのフェアトレードを研究テーマとして日々思索を深めていたそうです。卒業後、研究者の道を進むことも考えましたが、「フェアトレードを通して、新興国をビジネスの形で支えたい」という想いが芽生え、フェアトレードをやっている会社を探し始めました。

「あくまでもフェアトレードを前面に打ち出していない会社が良かったんです。いいものづくりをしていて、たまたまそれはフェアトレードの考えとも重なっているぐらいのスタンスがいいなと思っていました」。そして、まさに井上さんのイメージ通りの会社が見つかりました。それが現在勤める「IKEUCHI ORGANIC」だったのです。

「『IKEUCHI ORGANIC』には環境と安全に最大限配慮したモノづくりの哲学と物語があります。たとえば、綿花は遺伝子組み換えでない、無農薬のオーガニックコットン100%ですし、今治の本社工場や店舗の電気は風力発電で賄っていて「風で織るタオル」と呼ばれています。それから、店舗の空間もそうですが、研究所のような少しアカデミックなイメージを持ってつくられています。ただタオルを売るだけでなく、お客さまにとっていいものを追求し続けること、それをきちんと裏付けとともにわかりやすく噛み砕いて説明すること、そういう付加価値に魅力を感じたんです」。

思わぬタイミングで福岡へUターン

最初は京都の店舗に勤め、まさか福岡に戻るチャンスがあるなんて夢にも思わなかったという井上さん。働きはじめてわりと早い段階で「福岡に店舗をつくる」と知らされ、社歴は浅いながらも、近々自分は店長としてやっていくんだという心づもりで日々を過ごしました。

そして、福岡店のオープンとともに帰郷し、福岡店へ異動。東京や京都の路面店では、近くに住む馴染みのリピーターの方も多いせいか、距離感の近い接客がしっくりきていたそうですが、福岡は博多リバレインモールの1階にあります。

「周辺には博多座、ホテルオークラ福岡、福岡アジア美術館と福岡を代表する観光名所に囲まれてるせいか、見る目の肥えた女性のお客さまが大半です。また時期によっては、ホテルに泊まられる出張のビジネスマン、お中元お歳暮の季節は周辺のオフィス街に勤める働き盛りの方々、夏休みは、福岡アンパンマンこどもミュージアムinモールを訪れたファミリーと、本当に幅広い方々がお越しになります」。

シーズンやその時期のお客さまの需要を見越して、パッと目を引くディスプレイを仕上げるなど、店舗にも細やかな気遣いが散りばめられています。自宅用で購入する人よりも、ギフト用にと買って行く人が多いと言うのは質のいい「IKEUCHI ORGANIC」だからこそ、特に福岡店はその割合が高いのだそう。福岡限定アイテムなどもその背中を押してくれているそうです。

見るだけじゃなく、触れて使って

「うちのタオルの良さはパッと見て触っていただくだけではなく、実際に使ってみていただいた方が伝わるんです」。店舗の中に洗面ボウルがあり、日頃家でそうするように手を洗ってタオルで拭くという一連の動作を試せます。

「素材、織り方、毛足の長さ、いろんな種類があります。見た目で厚手が好みだとおっしゃる方も、薄手でも吸水力が侮れないことを実感するとそちらを選ばれたり、用途によって種類を変える方も少なくありません。うちのタオルは、コーティング剤を使っていないので使いはじめから吸水性が高いのですが、購入時と洗濯を重ねた後の違いも知っていただきたいので、毎日洗濯したタオルを出しているんです」と店内の洗濯機を見せてくれました。

入社前の自分からは想像もつかないくらいタオルにくわしくなったという井上さん。入社後、タオルソムリエの資格も取り、今では “タオルのプロ”と胸を張れるそうです。

井上さんという人に歴史があるように、「IKEUCHI ORGANIC」にもいろんな歴史があり、以前はOEM(他社ブランドの製品を製造する)主体の会社だったそう。しかし、2003年に取引先の倒産のあおりを受けて連鎖倒産を経験し、景気の波に左右されないよう、自社ブランドを打ち出す方針に切り替えたそうです。今治タオルがブランドとして大きく認知されだしたのもここ10年ほどの話ですが、「IKEUCHI ORGANIC」や井上さんも日々いろんな出会いや発見を吸収しながら成長しているのかもしれません。

導かれるように今の居場所に落ち着いた井上さん、「毎日使うものだからこそ、自分好みのものを選んで、何でもない日常のシーンで心地よさや幸せを感じていただきたいんです。そうやって身近なところに寄り添うことができるタオルをお届けしたい」と未来への展望も明かしてくれました。

<店舗情報>
「IKEUCHI ORGANIC」イケウチオーガニック 福岡ストア
住所:福岡市博多区下川端町3-1博多リバレインモール by TAKASHIMAYA 1F
電話番号:092-281-7708
営業時間:10:30~19:30
店休日:無休

<profile>
井上 夏樹 さん
福岡県生まれ、幼い頃はインドに暮らし、廃校となった大名小学校の卒業生でもある。大学入学以降、8年間を京都で過ごし、「IKEUCHI ORGANIC」に入社。福岡店オープンと同時に異動し、店長に。日本のものづくり、フェアトレードなどの良さや必要性を伝えていく仕事に誇りを持ち、福岡にもっと自社のタオルを根付かせたいと目標を掲げ、タオルソムリエの有資格者でもある。

●掲載内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。
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