カルチャー
2017.08.10(Thu)

【フクオカhumanpedia】第14回「小さなわくわくを大きな感動に」

このエントリーをはてなブックマークに追加

「フクオカhumanpedia」は、古くから商都として栄えてきた福岡の街を支えた、歴史上の著名な人物や、知る人ぞ知る職人たち、現在福岡の各分野で活躍している人々を紹介する連載コラムです。

第14回目に登場するのは、福岡ソフトバンクホークスの広報企画担当を務める上木原さやかさん。福岡ソフトバンクホークスといえば、日本プロ野球界のパシフィック・リーグで毎年大躍進を続ける人気球団です。

寝食を忘れるほどの仕事に出会いたくて

「実は私、福岡に住むのは初めてで、野球のルールも最近くわしくなったんです」と控えめに切り出した上木原さん。

生まれ育ちは鹿児島で、高校時代には映画会社が主催するヒロイン発掘オーディションでファイナリスト15名に選ばれ、今をときめく有名女優と同じ舞台に立ったと言う経歴の持ち主です。名門大学への進学を機に上京し、大学院まで心理学を専攻。卒業して社会に出るタイミングで、「これを仕事にしたい」と思えるものが見つからず、IT系の企業でプログラマー、システムエンジニアとして2年ほど働きました。

「この時、周囲で働いている同僚や先輩は、好きな仕事に就いて本当にきらきら輝いて見えました。日々の仕事で成長し、目標を達成する喜びを感じて、『土日もずっと仕事のことを考えていたって苦にならない』という感じの人ばかりでした。私ももちろん仕事が嫌いではないし、成長もさせてもらっていましたが、寝食も忘れて考えたり、休みを返上しても厭わないという感覚にはなれなくて、少しずつ別の道を考えるようになったんです」と当時を振り返ります。

とにかく「好き」と思える方へ

「自分は何が好きなんだろう」「何だったら寝食を忘れて打ち込めるだろう」、そんなことを考えながら、自分ととことん向き合った20代中盤。「そういえば」と思い出したのは、大学時代に夢中になった「ポケットモンスター」でした。

プログラミングの世界というのは、いわば1+1=2の世界。それはそれで、明確でクリアで素晴らしい世界でしたが、自分自身がいちばん胸踊るのはエンターテイメントのような、数字で表すことのできない、1+1が3にも5にもなるような世界だと感じたそうです。

「よし!」と思い立ったらすぐ動きます。「ポケットモンスター」に関わる仕事をしようと面接を受けに行き、見事「ポケットモンスター」の映画の広報に関わる仕事に就くことができました。1年に1本、夏に公開される映画をたくさんの人に知ってもらい、観てもらうために、商業施設とコラボレーションを仕掛けたり、全国各地を巡ってイベントを企画したり、未経験からの転職でしたが、とにかく毎日が吸収と成長の連続だったそうです。「『好きを仕事にするってコレか!』と毎日わくわくしていました」という上木原さん。「天職を見つけた」という実感とともに充実した毎日を過ごしていました。

居場所が変わっても、ブレなかった軸

転職から1年が経つ頃、結婚というターニングポイントがやってきました。東京で出会ったパートナーとはそのまま東京で暮らす選択肢もあったそうですが、お互い九州出身だったことから、故郷の近くに住むなら今のタイミングかもね、と移住を決意。

「福岡には住んだことがなかったけれど、仕事で訪れたことはあってとても魅力的な街だなと思っていました。新しい場所で新しいことに挑戦するのも性に合っていたし、周囲には驚かれましたが、自分たちは意外なほどあっさりと決意しました」

福岡への引越しが決まり、次はどんな仕事をしようかなと考えた時に、やはり外せないのは「人を楽しませるエンターテイメントの世界であること」でした。福岡、エンターテイメント、と考えていくうちに、ふと福岡ソフトバンクホークスが候補に上がります。

「人を楽しませたい」その一心で

ご実家のご家族にも強烈な野球ファンはおらず、球場で野球を観た経験もない、ルールも基本的なことしかわからない。そんな上木原さんでしたが、「人を楽しませたい」という一心で、これまでの仕事への情熱を訴え、見事福岡ソフトバンクホークス入り(!)を果たしました!

福岡へ移住するや、ランドマークであるヤフオクドームに毎日通うことに。人生何が起こるかわかりません。入社1日目、球場で野球を初観戦した上木原さん。何とその試合は、SAMURAI JAPANの壮行会という贅沢かつ記念すべき日でした。「初めてなのにとても感動した」というのが第一印象だったそうです。それからは野球の魅力にどんどん惹き付けられ、今ではどんな選手がこれから伸びるかななんて、ヘビーファンと同じレベルでチームを見守っています。

上木原さんが広報企画の立場で伝えていくのは、球団の選手についてではなくその周りの情報です。例えば、選手のグッズや球場で食べられる新メニューや選手コラボメニューなどのグルメ情報、シーズン中はほぼ毎週末行われるイベントなど、ネタは星の数ほどあります。「毎日球場を歩き回って、いろんな人から情報収集をして、とにかくネタを集めることからはじめました」

野球にくわしくなかったからこそ伝えられること

この春から勤める上木原さんにとって今シーズンは初めて尽くし。観るもの全てが新鮮で、野球大好きなホークスファンだと気づけないような魅力にも気づけているのが強みとも言えます。「野球にくわしくなかった私だから、若い女性など野球初心者の方にもおもしろいと思ってもらえるような情報発信ができるんじゃないかと思うんです。マスコミの皆さんにネタを届けるのはもちろん、ホームページの更新、SNSでのファンの皆さんへの語りかけなど、チームの魅力を知ってもらうためにはとにかくいろんなことに挑戦していきたい」と意気込み十分です。

毎年、新しい試みが話題のホークス、今年の目玉の1つは「タカガールシート」です。「とどけ、ピンクのエール。」をスローガンに、ファッション感覚で楽しんでもらえるようにとピンクのシートを新設。長時間座っていてもおしりが痛くならないようなクッションを入れたり、観戦ガイドやタカガールブレスなど特典てんこ盛りで、女子会気分で楽しめるような工夫がされています。登場直後からSNSで爆発的に話題になるなど早速ものすごい反響を呼んでいます。

「私の経験談ですが、野球にくわしくなくても、人に誘われてついていっただけでも、球場に来ると非日常のムードに包まれて気持ちが高まるんです。私はまだまだ専門用語にもくわしくないし、勉強中の身ですが、『楽しい!わくわくする!』という気持ちには人一倍敏感です(笑)!」と胸を張ります。

入社して気づいたホークスの魅力を尋ねると、「とにかく街に愛されていて、チームも福岡・九州を愛していて、地域に根付いているという底力を感じる」と即答。「ここ最近ホークスはとても強いですよね。そんな強さや人気を支えているのはもちろんファンの皆さんです!それから、選手・監督はじめチームに関わる方々だと思います。でも私たちも縁の下の力持ちとして、ドームに来たらいつもこんな楽しい魅力が溢れているよという環境をつくっています!もっともっとファンの皆さんに楽しんでいただけるようなチームをつくりたいなと日々がんばっています」

8月半ばには「ホークスサマーガーデン」と題し、限定グルメやビールを堪能しながら、夏と野球を満喫できるイベントが予定されています。「小さいお子さんからおじいちゃん、おばあちゃんまで、みんな一緒に笑って食べて楽しんで、1日中遊べます。夏休みや野球をもっともっと楽しんでもらえるように私たちが全力でお手伝いします!」と弾けんばかりの笑顔を見せてくれました。

<イベント情報>
「ホークスサマーガーデン」
2017/8/12(土)~16(水)、19(土)、22(火)~27(日)開催
HP:https://www.softbankhawks.co.jp/news/detail/00000537.html

<profile>
上木原 さやか さん
1988年、鹿児島県生まれ。お茶の水女子大学大学院出身。IT企業で2年間プログラマーを務めた後、「ポケットモンスター」を手がける株式会社ポケモンに就職。映画の広報を担当し、プロモーションやイベント運営などに携わる。2017年春、結婚を機に福岡に移住し、「福岡ソフトバンクホークス」の広報企画に所属。

●掲載内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。
このエントリーをはてなブックマークに追加