カルチャー
2017.11.07(Tue)

【フクオカhumanpedia】第17回「旅を彩る福岡の案内人」

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「フクオカhumanpedia」は、古くから商都として栄えてきた福岡の街を支えた、歴史上の著名な人物や、知る人ぞ知る職人たち、現在福岡の各分野で活躍している人々を紹介する連載コラムです。

第17回目に登場するのは、「西鉄ホテルクルーム博多」でクルーム コンダクターを務める語学堪能な高野恵理子さん。2016年夏のリニューアルオープン以来、観光で福岡を訪れる県外や海外のゲストに地元の魅力を伝えています。

旅を楽しくするカギは?

旅を楽しむのに欠かせないものといえば何でしょう。持ち物は人によって違うかもしれませんが、誰もが共通して欲しいものはこれではないでしょうか。そう、旅先の情報です。ビジネスでもプライベートでも知らない土地を訪れると、おいしいものや見ておくべき景色、買いたいお土産や会いたくなるような人など、気になるもののひとつやふたつはあるはずです。

高野さんは、ホテルに泊まるお客様のそんなリクエストに応えられるよう、いつも心の中に福岡の魅力の引き出しをいっぱい持っています。

思い立ったら気になる方へ。好奇心が拓いた未来

少しさかのぼって、高野さんの幼少時代のお話を聞くうちに今につながるルーツを見つけました。「エレクトーンを習いに通っていた教室の隣に英会話教室があって、みんなが楽しそうにおしゃべりしているのを聞いていたらうらやましくって。親に頼んでそちらに通うことにしたんです」。思い立ったらすぐ行動。

その当時から、言葉を話すこと、人と目を合わせて心を通わせることが好きだったという高野さん。小学生の頃の夢は、職業ではなく、「視野の広い人になりたい」という大きな理想を掲げていたそうです。コミュニケーションを通じて、意見の違いや多様性に触れることがとにかく楽しく、刺激的だったと振り返ります。

成長するにつれ、英語や人とのコミュニケーション、そして海外への興味は一層高まり、航空業界や旅行業界を志した時期も。20代前半までにとにかくいろんな国や地域を巡りました。グアム、ソウル、ラスベガス、しかし、いちばん肌に合うなと感じたのはL.A.でした。

なりたかった大人への階段を上って

大学卒業後は、縁あって、化粧品メーカーに勤めることになりました。「旅のお手伝いにも興味はあったのですが、美容の仕事は女性の毎日に寄り添えます。そこで私にしかできないことがあるんじゃないかなと思って、飛び込んでみました」。

仕事では多くの女性の肌や美の悩みに応えられるようにと全力を尽くしたそうです。「電話でお客様とお話しすることも多かったのですが、何度かお話ししていると声でその日の調子がわかることもあるんです。『今日は少し体調が悪いのかな』『今もしかしたら気になるテレビ番組を見ているのかな』とか。お客様の言葉をそのまま受け取るのではなく、声の後ろにある音や様子を読み取るように心がけていました」。

小学生の頃に目指していた“視野の広い人”は、こうした気配り力に長けた人でもあったのでしょう。仕事を通して、なりたかった大人になれたことを実感する瞬間にも出会えたかもしれません。

仕事のおもしろさがわかりはじめ、お客様との関係性も築けてきた頃、高野さんは体調を崩してしまいます。

立ち止まったことでわかってきた天職の予感

がんばりすぎたのかもしれないと少しだけ小休止して、自分を見つめ直す時間を持つことにしました。「そうだ、大好きだったL.A.に行こう」と迷わず旅に出ます。

人生たまにはひと休みもいいか、と1カ月ほどL.A.に滞在。そこで友人ができ、とても居心地のいい時を過ごせた高野さん。人生、自分、仕事、これから、いろんなことを考えたそうです。そして、ある答えが出ました。「今いちばん好きなことを仕事にしよう」。

L.A.に旅をしたことで、大学時代から憧れた旅行業界への気持ちが再燃しました。「ホテルだったら、お客様が旅の拠点にする大事なポイントだから、深い部分まで旅のお手伝いができる」、そう思い立ち、「西鉄イン(現・西鉄ホテル クルーム博多)」の門を叩きました。

「これだ!」そう思える仕事に出会えて達成感を噛み締める日々

未経験での入社ながら、持ち前の語学力と旅好きならではの好奇心で毎日の仕事はとても楽しかったと言います。このホテルでいくつかの季節を過ごし、またL.A.に行く機会を得ました。今度は前回の3倍も長い3カ月。いよいよ第二の故郷のような落ち着きを感じ始めたこの街でずっと働く道もあるのかなと考えることもありましたが、やはり日本に戻って、ホテルのプロになりたいという気持ちが勝ち、帰国。

「西鉄イン」での仕事ぶりが評価され、西鉄ホテルグループが初めて海外展開をする際、「ソラリア西鉄ホテル ソウル明洞」の立ち上げメンバーに大抜擢されました。「いつか海外で働きたいという夢を持っていたので、強く願っていれば叶うんだなと心の中でガッツポーズしました。私にとって初の海外勤務ですが、西鉄のホテルとしても初の挑戦。何としても成功させたかったんです」。

「西鉄イン」で韓国からのお客様の応対をしていて学んだ経験が生き、ソウルでも海外旅行のかゆいところに手が届くサービスを心がけたそうです。「日本人のお客様がほとんどでしたが、24時間日本語が通じるホテルの安心感は絶大でした。携帯電話の充電器をご準備したり、周辺マップを日本語で作ったり、ちょっとしたお困りごとにも細やかに対応するべく、チームでいろんな工夫をしました。初めての連続でしたが、苦には感じず、見るものすべてが新鮮で、私を成長させてくれました」。

私にしかできない“おもてなし”。終わりのない旅ははじまったばかり

ソウルで1年が過ぎる頃、今度はリニューアルオープンする「西鉄ホテル クルーム博多」へ異動が決まりました。日本と韓国でキャリアを積んだ高野さんの胸にはひとつの確信のようなものが芽生えていました。「韓国を訪れる日本人も、日本を訪れる外国人も、きっと欲しいものはそう変わらない。私は誠意を持って、お客様の求めるところに応え、その土地の魅力を伝えていくんだ」。

クルーム博多は博多駅からすぐの好立地にあるため、日本人外国人問わず、ビジネス・観光のお客様が押し寄せます。多い日は1日に数十人の外国人を受け入れることも。

高野さんだけではなく、お客さまに喜んでもらえることを常に考えているスタッフがたくさんいて、ホテルに到着した人たちが何を見ればホッとリラックスできるか、どうしたらもっと福岡を好きになってくれるか、いつも一生懸命考えているそう。

クルーム博多では、そんなスタッフが協力しあって様々な試みをしています。2か月に1度、大浴場で「香り湯」のイベントをしたり、お月見の文化を伝える英語の説明を書いて、餅をつくうさぎを折り紙で折ったり、福岡の情報が掲載された情報誌をたくさんラックにそろえたり。

ちなみに、チェックインしたばかりのお客様へのウェルカムスイーツは高野さんが見つけてきたそう。

「福岡のことをもっと知ろうといろいろ探検していて『Amis』さんという焼き菓子のお店を見つけたんです。春に桜の花びらを入れたクッキーを作っていらして、これをホテルのお客様にも出せないかと直接ご相談にうかがいました。今では季節に合わせてスイカ、サツマイモなどいろんな味のクッキーを作っていただいて、リピーターのお客様にも『楽しみにしてるわ』とお声がけいただいているんです」と胸を張ります。

福岡の隠れた魅力を掘り出して、県外・海外の人に伝えていくのは使命と力強く語る高野さん。「海や山がこんなに近くて、おいしいものも多くて、工芸品もたくさんある。世界的に見てもこんな魅力的な街ってめずらしいと思うんです。私の故郷である福津も最近人気のエリアなので、お問い合わせいただいたら誰よりも熱く私が魅力をご説明しています(笑)」。

「また来たい」と思ってもらえる街づくり、その最前線にいるのは広い視野を持ち、グローバルに活躍する人。こういう人が存在することも、また福岡の魅力と言えるかもしれません。

<店舗情報>
「西鉄ホテル クルーム博多」
住所:福岡市博多区博多駅前1-17-6
TEL:092-413-5454
HP:http://nnr-h.com/croom/hakata/

<profile>
高野 恵理子 さん
福岡県福津市生まれ。大学卒業後、化粧品メーカーに勤務後、L.A.を旅行し、かけがえのない友人や旅の素晴らしさと出会う。それを機に、旅のお手伝いをする仕事に就こうと、「西鉄イン」に入社。その後、「ソラリア西鉄ホテル ソウル明洞」に1年勤めた後、「西鉄ホテル クルーム博多」のリニューアルオープンに関わる。英語力と旅好きの視点を生かし、国内外のお客様のリクエストに応えられる情報を届けるコンダクターとして活躍。

●掲載内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。
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