カルチャー
2018.07.11(Wed)

【フクオカhumanpedia】第25回「海から伝える福岡の魅力」

このエントリーをはてなブックマークに追加

「フクオカhumanpedia」は、古くから商都として栄えてきた福岡の街を支えた、歴史上の著名な人物や、知る人ぞ知る職人たち、現在福岡の各分野で活躍している人々を紹介する連載コラムです。

第25回目に登場するのは、ベイサイドプレイス博多から出航するクルーズ「マリエラ」で一等航海士として活躍する尾形健さんです。海の上から能古島や福岡 ヤフオク!ドーム、福岡タワーなど福岡の魅力をナビゲートしています。

船乗りを選んだからこそ出会えた景色

生まれは、佐賀県多久市。日常的な思い出の風景に海がある街ではありませんでしたが、子どもの頃、家族と一緒に呼子から壱岐に旅行に行った時に乗った船にワクワクしたことはよく覚えていたそうです。

機械系や技術系に興味があって工業高校に進んだものの、卒業後の進路を考えた時に「船の操縦」というキーワードが浮かび、専門で学べる国土交通省の短期大学に進学することを決意。初めて地元を出て静岡県へ。「2年間の学生生活のうち、後半9カ月は訓練生として海に出るんです。全寮制で楽しい青春時代でした」と振り返ります。

卒業後は、海外に自動車を運搬する船の乗組員になったそうです。勤務シフトは3カ月航海をしては、1カ月休みというペース。「3カ月間は基本的にずっと船が動き続けていますが、数日に1度休みはあるんです。夜間ずっと前進している船も昼間に荷物の積み下ろしをするので、時々空き時間に自転車で行ける範囲をぐるっとまわったりして楽しかったです。ウラジオストックや香港で日本と全然違う景色を見たり、なかなか貴重な経験をさせていただきました」。

自転車を船に乗せて国内外でサイクリング

その船に数年乗った後、またちょっと違う船に乗ってみたいなと思い、転職を考えた尾形さん。次は国内で荷物を運ぶコンテナ船の乗組員に転身しました。航路こそ国内ながら、勤務はやはり3カ月働いて1カ月休みというペースでした。この時も自前の自転車を持ち込み、北海道でラーメンを食べたり、香川でうどんを食べたり、日本中のいろんな土地のいいところを見たそうです。

船を操船する仕事は、数時間ごとに交代しながら行うので、時には夜中に目をこすりながらという日もあったそうですが、国内外のいろんな場所に行けるエキサイティングな一面を満喫しました。そして30代にさしかかる頃、結婚を機に、「もう少し家に居られる仕事を」と考え、マリエラの乗務員に転職しました。

お客様の笑顔が何よりの褒め言葉

マリエラへの乗船が初の旅客船だったという尾形さん。「運搬船は天候や周囲の状況にはもちろん気を遣いますが、乗組員がみんな船に慣れているので乗り心地に気を遣う必要はないんです。でもお客様を乗せるとなると、丁寧に運転することが第一。お客様はお食事を楽しんでいたり、音楽や景色を見ながらおしゃべりに興じていらっしゃいますので、揺れが原因で不快にさせては本末転倒です」。

マリエラを操船していていちばんやりがいを感じるところを聞いてみると、「限られた時間の中で、福岡タワーやヤフオク!ドーム、能古島など見どころがたくさんありますが、季節や時間帯、その日の天候によって例えば夕日がきれいに見える角度も違うんです。その日、いちばん見応えのあるコース取りを考えながら、いい角度で景色が楽しめるように計算しながら操船しています。夕日がきれいな角度で見えるとお客様から歓声があがることもあるそうです。残念ながら操船中の航海士はそのお声を聞くことはできませんが、お見送りの時のお客様の笑顔が何よりの褒め言葉」だそう。

マリエラの航海士には二等、一等など役割があり、尾形さんは現在一等航海士に昇格したばかりです。一等だからこそ務められる大事な仕事として「離着岸」があります。マリエラはベイサイドプレイス博多を出港し、博多湾の中をクルーズするので他の船とすれ違う機会も多い航路。天候や風の具合によって加減が必要な離着岸も大変難しいそうです。

「船乗りにとって船長というのは社長みたいなもので、全責任は船長にあります。長い旅路の航海は航海士が交代しながら船を進めます。船長になれるのはかなり経験を重ねた後で、30代でなれたら早い方というような世界です。船長が休みの際、船長業務を務めさせていただく日もあるので、しっかりを気を引き締めて安心・安全な航海を目指していきます」。

季節や気候はもちろん、貸切・接待・ウエディングなど日によってさまざまな配慮が求められますが、「最高の1日をプロデュースしたい」という気持ちに変わりはありません。実はプライベートでもこの仕事をしていてよかったと思ったことがありました。毎年夏にマリエラから望む花火大会があり、家族・親戚を招いたときです。「家族がとても喜んでくれて私もうれしかったです。あらためてお客様1人1人をこんな笑顔にさせることができたらと心に誓いました」。

<Profile>
尾形 健
1983年、佐賀県多久市生まれ。国立清水海上技術短期大学校卒、自動車運搬船、内航コンテナ船の乗組員を経て、2013年よりマリエラの航海士に。三級海技士の有資格者。

「MARIERA<マリエラ>」
HP:https://www.mariera.jp/
レストランのお問合せ・お申込みは
電話番号:092-751-7171

ご宴会・ウエディングのお問合せ・お申込みは
電話番号:092-282-6621
営業時間:平日・土/9:30〜18:00、日・祝/10:30〜18:00

<イベント予定>
「ハワイアン ビアクルーズ」
開催中〜2018年9月30日(日)まで
ズワイ蟹やハワイアンロミロミが楽しめる
ディナークルーズ 19:00〜21:10(博多ふ頭発着)
7,500円(税・乗船料込)
※乗船2日前までに要予約
※3Fデッキのみの利用

●掲載内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。
このエントリーをはてなブックマークに追加
関連キーワード