カルチャー
2018.06.12(Tue)

【フクオカhumanpedia】第24回「“ミズベ”からまちを元気に」

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「フクオカhumanpedia」は、古くから商都として栄えてきた福岡の街を支えた、歴史上の著名な人物や、知る人ぞ知る職人たち、現在福岡の各分野で活躍している人々を紹介する連載コラムです。

第24回目に登場するのは、天神と中洲の間を流れる那珂川の上にある水上公園の仕掛け人、「ミズベリング ファンクラブ・フクオカ」の花村武志さんと山本憲司さん。水辺ならではの楽しみ方を提案しながら、まちの魅力を底上げしています。

2016年に福岡市民の憩いの場として再生した「水上公園」

水上公園は、数年前までは遊具も店もないシンプルな公園でした。そこに2016年7月、「SHIP’S GARDEN」という施設がオープン。”世界一の朝食”と呼び声の高い「bills」と地元で愛されてきた中華の「星期菜」は、いつも行列ができるほどの賑わいを見せています。

あっという間に観光名所としてブレイクした水上公園を「もっと元気にしたい」と立ち上がったのが花村さんと山本さんです。元々おふたりは水上公園の開発にも関わりがあった縁で、この空間を手がけた建築家の方々とも懇意にしていました。その方々とも「この公園はここで終わってはいけない」と話していて、情熱の火を燃やし続けたことが次につながりました。「まちを元気」にとはいっても具体的にどうすればいいか模索していた頃、おふたりは「ミズベリング」のことを耳にします。

「水辺をもっと元気にしたい」という情熱の火

「ミズベリング」とは、2014年の春に東京でスタートしたプロジェクトです。関わるスタッフは、行政・会社員・音楽プロデューサーなどさまざまですが、コンセプトは、公共空間である水辺がイノベーターたちの手によって創造的な空間として生まれ変わること。

花村さんは水辺についてこう話します。「思えば古くから人は水辺とともに栄え、賑わいを進化させてきたはず。しかし、技術が進み、水辺から離れたところでも問題なく暮らせるようになってから、水辺は置いてきぼりにされてきていたんです。特に都心部に生まれ育った人は、川で遊んだ思い出がない人も珍しくないと思います」。

続けて山本さんも「アムステルダムとかセーヌ川とか日本で言えば大阪の道頓堀なんかは水辺が元気なまちの代表です。でも最近は河川を管理する規制が緩和されたおかげでカフェやテラスができたり、新しい試みがなされる水辺も増えてきた」と現状を語ります。

ミズベリングは、「水辺+RING(輪)」、「水辺+ING(進行形)」、「水辺+R(リノベーション)」の造語。まさに生まれたばかりの水上公園にもしっくり来るワードばかりでした。「これだ!」と確信した花村さんと山本さんは早速東京へ、ミズベリングのプロデューサーに会いに行きます。

天神と中洲の間で新しい魅力を発信

「福岡の水辺も元気にしたい」という熱い思いと水上公園の将来像の大型模型を持って事務局へ向かい、プロデューサーと話す機会を持つことができました。思いは伝わり、ミズベリングの方々からも応援していただけることに。晴れて「ミズベリング ファンクラブ・フクオカ」として、福岡で“ミズベ”の活動を開始することになったのです。「ファンクラブという名前をつけることで、あくまでもミズベリングのフォロワーとしてリスペクトする関係性を築くことができました」と山本さん。

それからは、水上でのヨガやSUP、ポロなどのアクティビティのイベントを行ったり、7/7の7時7分、水辺を愛する人が全国の水辺で一斉に乾杯する催しを開催したり、積極的に活動を行ってきました。「DJイベントを行ったときも大盛況でした。元々水上公園は、1日中活気がある天神と、夜が元気な中洲の間にあって、朝・昼に賑わう場所にしたかったんです。それが功を奏し、朝昼は子育て層の方もたくさん来てくれるようになりました。そこで今度は逆に夜のイベントもやっていこうという目論見も成功したというわけです」と花村さん。ハロフィンの時には仮装をした人たちがSUPで水上パレードを行うなど、まちの注目も集めました。

山本さんは「最初は少ない人数から活動を始めたのであまり認知度が高くなかったものの、ヨガなど定期的に行うイベントをきっかけにして徐々に『最近那珂川でSUPしている人いるよね』なんて噂を耳にするようになりました。福岡にはSUPやピクニックを楽しむ会があって、その方々も水上公園での活動を楽しんでくれているんです」とうれしそうに振り返ります。

水辺のあり方が都市のあり方のセンスにもつながる

もうすぐオープンから3年目を迎える水上公園とともに「ミズベリング ファンクラブ・フクオカ」もますますパワーアップしていきたいと考えているそう。

「定期的に行うアクティビティの他に、年に1度、ミズベに親しんでもらうためのイベント『THE MIZBECK GARDEN』も開催しています。これはフリーマーケットやトークイベントなど水辺で様々な遊びを取り入れる2日間のイベントで、これまで福岡でやってきた水辺の活動を振り返るとともに、未来の水辺の可能性を広げていくきっかけにもなっています。また同じタイミングで『TAIYO asobi switch』とともに行う『ミズベリングフクオカシティカップ』は日本一参加しやすいSUP大会と銘打っています。とにかく水辺を市民の皆さんにとって身近な存在にしたい」と花村さん。

水辺を愛する人たちの間で大切にされている考え方に「水辺との付き合い方がその都市のセンス」というものがあるそうです。「ミズベリング ファンクラブ・フクオカ」のおふたりもこの考え方に賛同。「水辺が元気なまちは日常生活もお祭りのような非日常も水辺とともにあります。僕らも仲間を増やして、この活動を大きく展開していくことで、水辺を見て福岡って魅力的なまちだなと思ってもらえるようにしていきたい」と志しています。

今は水上公園を拠点にしていますが、このネットワークをもっと広げて、福岡の水辺を元気にすることが夢だそう。今後はこれまでにやっていない催しにも挑戦していくとのことなので、パブリックスペースの新しい形として、福岡在住の人はもちろん、県外海外から来る観光客の方にとっても大きな魅力となるに違いありません。

「MIZBERING FUN CLUB FUKUOKA<ミズベリング ファンクラブ・フクオカ>」
http://mizbering-fukuoka.tumblr.com/

<イベント予定>
「水辺で乾杯2018」
2018年7月7日 夜7時7分
水上公園にて、全国の水辺で一斉に乾杯するイベントを開催。

「THE MIZBECK GARDEN<ザ・ミズベック・ガーデン>2018」
2018年9月29日(土)・30日(日)
風が心地よい水辺で食・音楽・SUPスポーツ・マーケットなどを楽しむ2日間。

●掲載内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。
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